カテゴリー  [ 短編小説 ]

マイナス1度

嘘か真か知らないが
こんな逸話が語られている・・・
この携帯電話が一人一台の時代に
真夜中の公衆電話に0度のテレホンカードで電話が出来ると・・・
どこに繋がるかは諸説あり定ではないようだ

はぁ~寒い・・・
空からは雪が舞い降りてきた
こんな日は早く家に帰って酒を飲みたい
「あっ、しまった・・・」

忘年会の店の手配の借り押さえが出来た事を幹事に伝えていなかった事を思い出した
私は携帯電話を取り出し通話メニューを操作しようとしたが、充電残が7%・・・
こりゃアカン・・・
私は足早に家路へと急ぐ途中、公園の横にある公衆電話に目が行った
そういえば公衆電話に関する都市伝説があったな・・・
そう思った瞬間に、私の足は公衆電話へと向かっていた
都合よく公衆電話の下にはテレホンカードが捨てられている
私はソレを拾い公衆電話に差込、指のむくままにダイヤルをプッシュする
私がソラで番号を押せるのは一人しかいないんだけどな・・・
まぁ繋がる分けないが・・・
そう思いながらダイヤルをプッシュしていくと
受話器からコール音が響く
誰か新規契約者でも居るのかな?
等と頭に過ぎったが、冷静に考えたら度数が0のテレホンカードを使用している時点でコールが響く事自体に・・・

おかしい・・・
そう思った時に受話器を下ろすのが正解なのだろうが・・・
私は酔狂な人間・・・
面白そうな事には率先して足を突っ込みたがる
何回かコール音が響いた後に通話状態になる

「もしもし・・・」
受話器の向こうから懐かしい彼女の声が聞こえてくる・・・
!?
ホントかよ・・・、私は頬をつねって周りを見渡す・・・
「もしもし・・・」
思わず口が滑った
「元気?」
「うふふ・・・、私はある意味元気よ・・・」
変わらぬ声で君が微笑む
「一つ聞いてもいいかな?」
「な~に」
「足はついてるの?」
「うふふ・・・、足はついてるわよ」
「久しぶり・・・」
「ホント久しぶりね」
「いつ以来だったっけ」
「どれくらいだったかなぁ」
「あ~、葬式以来だったな」
「あ~、そうそう最後に会ったのはお葬式だったね」
「そりゃ~顔が綺麗で」
「ま~ね、最後だったし・・・」
「今からチョットだけでも会えないかな?」
「ナニ言ってんのよ・・・、」
「無理は承知だけど」
「しょうがないわね・・・」
「でも・・・、怖い顔で急に出てこないでよね」
「うふふ、ソレはどうかしらね~」
「心の準備もあるし」

ゴゥ・・・

デンワボックスの外で一陣の風と共に雪が吹き荒れ、一瞬視界を覆い尽くす・・・
視界が再び広がるとソコには・・・
思い出の写真と同じ・・・懐かしい彼女の姿があった・・・

「もう・・・相変わらず強引なんだから・・・」
「久しぶり・・・」
私はデンワボックスから出て彼女の方に近づいて行く
「会いたかった・・・」
「私もよ・・・」
「ずっと言えなかった事があるんだ・・・」
「な~に?」
「あの時君に言いたかった言葉は・・・」
「うん・・・」
「ずっと好きだったんだ・・・」
「うん・・・」
「結婚してくれ・・・」
「嬉しい・・・」
「そう言いたかったんだ・・・」
「その言葉が聞けただけでも嬉しいよ・・・、グスッ・・・」
そう言うと彼女は泣き出した・・・
私が彼女を抱きしめようと更に足を踏み出した瞬間
再び一陣の風と共に雪が視界を覆う様に吹き荒れる・・・
私は目を凝らしながら彼女を見ると
雪と共に姿が掻き消えていった・・・
風の音の中に彼女の声が聞こえた気がした・・・
「あなたの事、今でも好きよ・・・」
と・・・

暫らくの間、私はその場に立ち尽くしていた・・・

公衆電話のデジタル表示がマイナス1度
次は自分の部屋にかけるか・・・
[ 2016/12/31 09:39 ] 勿忘草の想い 短編小説 | TB(0) | CM(6)
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プロフィール

もっさん

Author:もっさん
数奇なDestinoに導かれ
愉快な仲間に巡りあいました

重度の腰痛持ちの突撃隊長
便利屋稼業に磨きがかかり
今日も愉快に暗躍してます

最近は銭湯巡りに精を出しております

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